今日の「これはいいものだ」は、一風かわったこちらのスーツです。



カノニコ：「VITALE BARBERRIS CANONICO」 のマルチグレーストライプ、
Super'110の生地を使用したオーダースーツです。

どうでしょう？見ると、おや？ってカンジですよね。
ビジネス系には珍しい、1つボタンのピーク襟のメインディテールもそうなのですが、
上襟と、ポケットに別生地を使用しています。

ポケットも通常のスーツのようなフラップ(雨ぶた)はなく、
タキシードのような両玉ブチ仕様になっています。

このスーツは、ディレクターズスーツやピークドカラーのタキシードと
同じ型紙をベースとした、とてもフォーマルなスーツになっています。

左が主賓格の装いディレクターズスーツ、右がピーク襟のタキシードです。


このスーツをご依頼いただいたお客様は、
以前にご注文いただいていたスーツを店頭にお引取りにいただいた際、
出来上がった商品をたいへんお気に召されて、
その場ですぐに追加オーダーをいただいたという、
とても稀な例でした。


しかし、このお話を大阪店スタッフから聞いたときは
電話で話しながら、右手で小さくガッツポーズでしたよ(笑)

お客様のご希望→ショップスタッフ→僕→工房→お客様

と、ゼロからスタートしてお客様が製品を手にされたとき、
「バッチリ！」
と喜んでいただけたというのは、本当に幸せです。


スーツづくりにおいて、指図するだけで、
はさみも握らず、ミシンも踏まない僕の力なんて本当に微々たる物です。

お客様の形にないイメージを読み取る
接客に立ったスタッフの苦労、

イレギュラーな内容にも一生懸命取り組んでくれた
工房の職人のみなさんの苦労、

僕はそれをただ繋ぐだけですから。

それでも、お客様が
「そうそう！こんなイメージやってん！」と
喜んで袖を通されたという話を聞くだけで嬉しくなります。


そして、今回のこの襟違いスーツのオーダーでは、
不肖、この僕に生地替え部分をお任せいただくという
たいへん光栄なご依頼いただきました。


最近、この上襟だけ違うスーツも、テレビ番組などで
タレントさんが多く着用するシーンを見るようになりました。

しかし、そういう既製品をお求めになるのではなく、
これを当店でオーダーいただけたということがまた幸せなこと。



表地は、前述のとおりカノニコの生地で決まっていましたが、
上襟とポケットは「おまかせ」との事。

スタッフにグラデーションのようなものがいいのか、
コントラストがはっきりするものがいいのか、
お客様とお話した様子を聞き、できる限りお客様の意図を探っていきます。


どうやら、コントラストをつけた方がお好みでは？
ということで、工房にこっそり置いてある宝箱をあさりにいきました。


【宝箱】とは、
社長が数年前に、催事などで使用したオーダー用の生地のようなのですが、
先日、大掃除していると倉庫からキレイなまま発見されまして。

中には英国製やイタリア製のイイ生地がたくさん入っていたんですよ！
これはツタンカーメンの王墓以来の大発見！


イイモノの例を挙げますと、
この間、ご紹介させていただいた僕のサイズで製作してもらっている
Ray O'Hara：レイオハラの3Pスーツ・シングル2釦の生地も、
この宝箱から見つけました。


で、その宝箱の中から見つけたのが、この淡いグレーの生地です。


生地の状態のとき、互いを重ねて色のバランスはいいのではないかなぁ？と、
工場長と相談してはいたのですが、
実際に襟のカタチとなって付いてくるまでは正直不安でした。

最初は違う生地を選んでいたのですが、
裏地を見て、このブルーを選ばれているなら・・・と思い切って、
上の写真の生地に決めました。



納期が近づくにつれ、ドキドキと不安と・・・。

プレスから上がってくる日には、プレス屋さんが来たと同時に
工房に上がって完成品を見て、
両腰と上襟にアクセントがつき、とてもいいデキだ！と感激しました。


ただ、それはあくまで僕の好みで選んだ生地の組み合わせ、
好みも僕寄りなので、お客様がどのように感じられるかは正直不安であります。


また、前回のように喜んでいただけたという吉報を待ちわびながら・・・。